ノグチゲラは世界中を探しても沖縄本島のヤンバルの森にしかいないとされ、分類としてはキツツキの同じ種類に該当します。郷土を代表する鳥として、1972年に沖縄県の県鳥に選ばれました。1977年には希少な鳥として、国の特別天然記念物に指定されています。ノグチゲラと呼ばれる名前は、1886年にイギリス人に同行して、1羽のキツツキの幼い鳥を採集した日本人の名前が野口さんであったことが和名の起源です。ゲラとはキツツキを表した言葉です。
ノグチゲラの概要として外見の特徴は、全長が約30センチほどとなっています。オスとメスで体の大きさに違いはなく、体重は約140グラムほどです。体の色は暗い褐色をしていますが、頭の上の部分が赤色をしているのがオス、黒っぽい色をしているのがメスというように区別をすることができます。ひなはオスもメスも頭が赤い色をしているのが特徴で、翼には多くの白い斑点が見られます。生態としては一夫一妻で一度つがいが形成された場合には、つがいが継続して行きます。同じパートナーと毎年一度繁殖を行い、イタジイなどの幹に穴を掘って巣を作ります。産卵数は2から5個ほどで、白い卵は孵化まで約12日ほどです。約30日ほどするとヒナが巣立ち、寿命は10年以上ということはわかっています。夫婦の絆が非常にかたい種類ということが分かるでしょう。ひなの餌は甲虫類の幼虫、クモ類やムカデ、タブノキの実やヤマモモの実などが該当します。特にオスの場合には蝉の幼虫やクモなどを地面に降りてくちばしで土を掘って捕まえます。雄の子の餌を捕まえる行動は、他の類では見られない独特の行動となっています。
ノグチゲラはなぜ生息域が限られているのかと不思議に思うかもしれませんが、一般的にキツツキ類は森林に生息しています。ノグチゲラが繁殖していける森林は樹齢が50年以上の森林に該当します。これまでに森林の伐採や開発行為などが進んで、生息域がどんどん減少してしまったのです。マングースが侵入したことも、大きな脅威だったことでしょう。現在では個体数についてはしっかりとはわかっておらず、90年代には400羽程度だと推定されていました。ノグチゲラを保護するために私たちにできることは、やはりノグチゲラの生態を知ることと言えるでしょう。渡りをしないので沖縄の森林でその命を繋ぎ、世界でここにしかない希少なキツツキへと進化を遂げました。共に生きることを実感することが、保護には大きく役立ちます。